
DX戦略やロードマップを作ったものの、現場ではなかなか動き出せない。そんな状態になることがあります。
原因の一つは、戦略がまだ「方針」のままで、現場タスクや担当者、期限、KPI、確認会議まで落とし込まれていないことです。経営側では方向性が見えていても、現場では「結局、誰が何をいつまでに進めるのか」が見えなければ、日々の行動に変わりにくくなります。
DX戦略を実行計画に落とすとは、戦略を現場で確認できるタスク、担当、期限、KPI、見直しサイクルへ変換することです。
公的なDX関連資料でも、DXは戦略を作るだけではなく、指標、評価、会議での確認、見直しまでつなげて考える必要があると整理されています。つまり、DX戦略は「作って終わり」ではなく、現場で確認し、必要に応じて見直せる形にしておくことが大切です。
この記事では、DX戦略を現場で動く実行計画に変えるための整理ポイントを、非IT担当者にも分かる形で解説します。DX戦略の定義やロードマップの作り方ではなく、すでに決めた戦略を、現場タスク、担当者、期限、KPI、進捗確認、見直しサイクルへ落とし込む方法に絞って整理します。
DX戦略を実行計画に落とすとは、現場で動く形に変えること
DX戦略は、作っただけでは現場の行動に変わらない
DX戦略は、自社が何のために業務や仕組みを変えていくのかを示す大切な方針です。ただし、戦略を作っただけで、現場が自然に動き出すわけではありません。
現場で必要になるのは、「次に何をするか」「誰が担当するか」「いつまでに進めるか」「何を見て判断するか」です。つまり、DX戦略を実行計画に落とすとは、経営側の方針を、現場で確認できる作業単位へ変換することです。
実行計画は、経営側の戦略と現場の行動をつなぐ翻訳表です。戦略を実行計画に落とすことで、関係者が同じ表を見ながら、進捗、課題、次の判断を確認しやすくなります。
実務では、戦略の言葉が大きいほど、現場では動き方が見えにくくなることがあります。「顧客対応を改善する」「データを活用する」「業務を効率化する」といった言葉は大切ですが、そのままでは作業には落ちません。どの業務を、どの順番で、誰が、どの状態まで進めるのかに置き換えてはじめて、実行しやすくなります。
DX戦略そのものの意味や立て方を確認したい場合は、DX戦略の立て方も参考になります。本記事では、立てた戦略を実行計画へ落とし込む部分に絞って進めます。
DX戦略・ロードマップ・実行計画・現場タスクの違い
DX戦略、ロードマップ、実行計画、現場タスクは似ていますが、それぞれ役割が違います。
| 項目 | 主な役割 | 粒度 | 主に見る人 | 止まりやすいポイント |
|---|---|---|---|---|
| DX戦略 | 何のために変えるかを決める | 大きい | 経営層・推進責任者 | 方針だけで終わる |
| DXロードマップ | どの順序で進めるかを決める | 中長期 | 経営層・推進担当 | 現場タスクに落ちない |
| 実行計画 | 誰が、何を、いつまでに、何を見て進めるかを決める | 施策単位 | 推進担当・現場責任者 | 担当やKPIが曖昧になる |
| 現場タスク | 今日・今週・今月に行う作業を決める | 作業単位 | 現場担当者 | 作業が細かすぎる、または大きすぎる |
ロードマップは、DXをどの順番で進めるかを整理するものです。一方、実行計画は、ロードマップに書かれた施策を、現場で動かすための担当・期限・確認方法まで落としたものです。
この違いを分けておかないと、ロードマップを作った時点で「実行計画もできている」と誤解しやすくなります。ロードマップに「問い合わせ管理を改善する」と書かれていても、誰が、どの表で、いつまでに、何を確認しながら進めるのかが決まっていなければ、現場では止まりやすくなります。
ロードマップ全体の考え方を確認したい場合は、DX推進ロードマップの作り方もあわせて確認すると、今回の記事との違いが分かりやすくなります。
DX戦略が実行に移らない主な原因
戦略が抽象的なスローガンで止まっている
「DXを進める」「業務を効率化する」「データを活用する」といった言葉は、方向性としては大切です。ただ、それだけでは現場は動きにくいです。
たとえば、「顧客対応を改善する」という戦略があったとしても、それをそのまま現場に渡しても、具体的に何を変えるべきかは分かりません。問い合わせ管理を見直すのか、対応履歴を残すのか、見積作成を早くするのか、担当者間の共有を改善するのかで、必要なタスクは変わります。
DX戦略を実行計画にするには、まず改善テーマを具体化する必要があります。「何を変えるのか」が曖昧なままでは、タスク、担当、KPIを決めにくくなります。
実務では、最初から大きなテーマを完璧に分解しようとするより、「今いちばん詰まっている業務はどこか」「まず見える化したい業務はどこか」を確認する方が進めやすくなります。抽象的な戦略を、現場が見て判断できる大きさまで小さくすることが最初の一歩です。
担当者だけ決めて、責任者や判断者が決まっていない
DX推進では、担当者を決めることは大切です。ただし、担当者名だけを決めても、実行計画としては不十分です。
担当者が作業を進める中で、判断が必要になる場面があります。既存業務を変えてよいのか、どの部署まで巻き込むのか、予算を使うのか、ツールを試すのか。こうした判断者や相談先が決まっていないと、担当者が動きにくくなります。
担当者名だけではなく、責任者・判断者・相談先まで決めることが、実行計画では重要です。
特に中小企業では、専任のDX担当者ではなく、営業、総務、現場責任者、経営者などが兼任で進めることもあります。その場合、担当者にすべてを任せるのではなく、「作業する人」「判断する人」「相談できる人」を分けるだけでも、進めやすさは変わります。
DX推進の体制や役割分担を整理したい場合も、組織づくりそのものではなく、実行計画上での担当整理に絞って考えます。
KPIが現場行動とつながっていない
KPIという言葉を聞くと、売上、件数、削減時間などの数字を思い浮かべるかもしれません。もちろん、数値で確認できることは大切です。ただし、KPIを置けばDXが進むわけではありません。
KPIは、進め方を続けるか、止めるか、見直すかを判断するための材料です。現場の行動とつながっていないKPIは、管理のための数字になりやすく、実行計画の改善にはつながりにくくなります。
たとえば、問い合わせ対応を改善する場合、単に「問い合わせ数」を見るだけでは不十分なことがあります。対応漏れの件数、初回返信までの時間、担当者間の引き継ぎ状況、顧客情報の入力状況など、現場で改善できる指標もあわせて見る必要があります。
KPIは成果を保証するものではなく、見直しの判断材料として置くことが大切です。
KPIを決めるときは、「この数字を見て、次に何を判断するのか」まで考えます。続けるのか、止めるのか、やり方を変えるのか。判断に使えない指標は、実行計画の中で優先度を下げてもよい場合があります。
ツール導入やPoCが先に進んでしまう
DXというと、ツール導入やAI活用、システム化を先に考えたくなることがあります。しかし、ツール導入は実行計画の一部であり、実行計画そのものではありません。
対象業務、利用者、確認指標が曖昧なままツールを選ぶと、導入後の運用が後付けになりやすくなります。PoCを行う場合も同じです。何を検証するのか、どの結果なら次に進むのか、誰が判断するのかを決めておかないと、検証だけで終わる可能性があります。
ツール導入やPoCに進む前に、実行計画の中で「何を確認するのか」を整理しておくことが必要です。
実務では、ツール選定の前に「どの業務の、どの作業を、どの状態にしたいのか」を整理しておくと、必要な機能や運用ルールも決めやすくなります。逆に、ツール名から入ると、現場で使うルールや確認方法が後回しになりやすくなります。
DX戦略を実行計画に落とす基本ステップ
改善テーマを1つに絞る
最初から全社一斉にDXを進めようとすると、計画が大きくなりすぎます。特に中小企業や兼任担当者が中心の場合、いきなり複数部署・複数業務を同時に変えようとすると、担当者の負担が大きくなります。
まずは、1つの業務や1つの改善テーマに絞る方が現実的です。
たとえば、次のようなテーマが考えられます。
- 問い合わせ対応の抜け漏れを減らす
- 見積作成の確認時間を短くする
- Excelで管理している案件情報を整理する
- 日報や作業報告の共有方法を見直す
- 顧客対応履歴をチームで見えるようにする
この段階では、まだツール名を決めなくても構いません。まずは、どの業務の何を改善したいのかを明確にします。
「DX」という言葉が大きく感じる場合は、業務改善の言葉に置き換えると整理しやすくなります。たとえば、「データ活用」ではなく「問い合わせ履歴をチームで見られるようにする」、「自動化」ではなく「毎月の集計作業を減らす」といった形です。
改善テーマを現場タスクに分解する
改善テーマが決まったら、次に現場タスクへ分解します。
たとえば「問い合わせ対応の抜け漏れを減らす」というテーマであれば、次のように分けられます。
- 現在の問い合わせ経路を洗い出す
- 担当者ごとの対応ルールを確認する
- 対応履歴を残す項目を決める
- 未対応の確認方法を決める
- 週次で抜け漏れを確認する
- 一定期間運用して、改善点を見直す
ここで大切なのは、タスクを大きくしすぎないことです。「問い合わせ管理を改善する」ではまだ大きすぎます。「問い合わせ経路を洗い出す」「対応履歴の項目を決める」のように、実際に動ける単位まで分けます。
DX導入全体の流れを確認したい場合は、DX導入の基本ステップも参考になります。本記事では、その中でも実行計画に必要な分解に絞って整理します。
担当者・責任者・期限を決める
タスクに分解したら、それぞれに担当者、責任者、期限を置きます。
担当者は作業を進める人、責任者は判断や優先順位を決める人です。兼任担当者が多い場合は、担当者に判断まで任せすぎないように注意します。
期限も、単に日付を入れるだけではなく、完了条件を合わせて決めます。
たとえば、次のように整理します。
- 現在の問い合わせ経路を洗い出す
- 担当者: 営業担当
- 責任者: 営業責任者
- 期限: 月末まで
- 完了条件: 問い合わせ経路と担当者の一覧が作成されている
このように、期限と完了条件をセットにすると、進捗確認がしやすくなります。
完了条件を入れておくと、会議での確認も具体的になります。「進んでいます」ではなく、「一覧ができているか」「担当者の確認が済んでいるか」「次に判断することは何か」を確認できます。
KPI・確認指標を置く
次に、KPIや確認指標を置きます。
KPIという言葉が難しく感じる場合は、「進み具合を確認する数字や状態」と考えると分かりやすくなります。
たとえば、問い合わせ対応の改善であれば、次のような確認指標が考えられます。
- 未対応の問い合わせ件数
- 初回返信までの時間
- 対応履歴の入力率
- 担当者間の引き継ぎ漏れ
- 週次確認で見つかった改善点
必ずしもすべてを数値化する必要はありません。定量的に見られるものは数字で確認し、数値化しにくいものは「確認できているか」「共有できているか」といった状態で見てもよいです。
大切なのは、KPIを現場行動とつなげることです。見ても次の判断に使えない数字を並べても、実行計画は改善しにくくなります。
また、経営側が見る指標と、現場側が見る指標を分けることも大切です。経営側は費用対効果や全体の進み具合を見たい一方で、現場側は日々の入力状況、対応漏れ、確認作業の負担などを見た方が改善しやすい場合があります。
進捗確認と見直しの場を決める
実行計画は、作って終わりではありません。進捗を確認し、必要に応じて見直す場を決めておきます。
たとえば、次のような分け方ができます。
- 週次: 現場タスクの詰まりを確認する
- 月次: 施策の進捗とKPIを確認する
- 四半期: 継続、停止、横展開を判断する
これはあくまで例です。会社の規模や担当者の負担に合わせて調整して構いません。
完璧な計画表を作ることより、見直せる状態にしておくことが重要です。最初から細かく作りすぎると、更新するだけで負担になってしまいます。まずは、関係者が見て判断できる範囲から始めます。
会議では、進捗の報告だけでなく、止まっている理由を確認します。担当者が忙しいのか、判断者が決まっていないのか、入力項目が多すぎるのか、ツールが合っていないのか。原因が分かれば、計画を直しやすくなります。
実行計画に入れる項目チェックリスト
最低限入れたい項目
DX実行計画は、戦略を現場で進めるために必要な情報を整理する表です。何を変えるのか、誰が進めるのか、何を見て判断するのかが分かるようにしておくと、進捗確認や見直しがしやすくなります。
DX戦略を実行計画に落とすときは、最低限、次の項目を整理します。
| 項目 | 決める内容 | 決めないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 目的 | 何のために取り組むのか | 手段が先行しやすい |
| 改善テーマ | どの業務を変えるのか | 対象範囲が広がりすぎる |
| 現場タスク | 具体的に何をするのか | 担当者が動きにくい |
| 担当者 | 誰が作業するのか | 作業が宙に浮く |
| 責任者 | 誰が判断するのか | 担当者任せになる |
| 期限 | いつまでに進めるのか | 進捗確認ができない |
| 優先順位 | 何から進めるのか | あれもこれもになりやすい |
| KPI / 確認指標 | 何を見て判断するのか | 効果が分かりにくい |
| 進捗確認の場 | どこで確認するのか | 状況が属人的になる |
| 見直しタイミング | いつ計画を修正するのか | 作って終わりになる |
| 相談先 | 止まったとき誰に聞くのか | 担当者が抱え込みやすい |
この表をすべて完璧に埋める必要はありません。最初は、目的、改善テーマ、現場タスク、担当者、期限、確認指標だけでもよいです。運用しながら、必要な項目を追加していきます。
担当や責任者の分け方で迷う場合は、先ほど紹介したDX推進体制の作り方も確認しておくと整理しやすくなります。
最初から細かく作りすぎない
実行計画を細かく作りすぎると、運用の負担が増えます。
特に、最初の段階で細かいKPIや詳細な進捗表を作り込みすぎると、更新すること自体が目的になりやすくなります。実行計画は、社内で使うためのものです。管理表をきれいに作ることより、関係者が見て判断できる状態にすることを優先します。
まずは、月次で見直せる範囲から始めると現実的です。動かしてみて、足りない項目が見えたら追加します。
実行計画は、完成品として作るより、更新しながら使う前提で作る方が現場に合いやすくなります。特に、兼任担当者が多い場合は、確認項目を増やしすぎないことも大切です。
止まりやすい計画と、進みやすい計画の違い
実行計画が止まりやすいか、進みやすいかは、表の作り込みよりも、判断に使える状態になっているかで変わります。
| 観点 | 止まりやすい計画 | 進みやすい計画 |
|---|---|---|
| 目的 | DXを進める、効率化するなど抽象的 | どの業務をどう変えるかが具体的 |
| タスク | 大きすぎる | 作業単位に分かれている |
| 担当 | 担当者名だけ | 担当者・責任者・相談先が分かれている |
| 期限 | 日付だけ | 完了条件とセットになっている |
| KPI | 数字だけ並んでいる | 次の判断に使える |
| 会議 | 報告だけ | 詰まりと次の判断を確認する |
| 見直し | 作って終わり | 月次や四半期で更新する |
| ツール導入 | ツール名から決める | 業務と確認指標から決める |
進みやすい実行計画は、きれいな計画表ではなく、次の判断に使える計画表です。
この違いを意識すると、実行計画を「管理するための表」ではなく、「次に何を変えるかを判断するための表」として使いやすくなります。
ツール導入やPoCに進む前に確認すること
ツール導入は、実行計画の一部として考える
DXツールやシステムを導入することは、DX推進の一部です。ただし、ツール導入そのものが実行計画になるわけではありません。
ツールを選ぶ前に、次の点を整理しておきます。
- どの業務を変えたいのか
- 誰が使うのか
- どの作業を減らしたいのか
- 何を見て効果を判断するのか
- 導入後、誰が運用を確認するのか
- 使われなかった場合、どこを見直すのか
この整理がないままツールを選ぶと、導入後に「使い方が分からない」「誰も入力しない」「確認する人がいない」といった状態になりやすくなります。
ツール導入前に業務整理をしておくことで、必要な機能や運用ルールも決めやすくなります。
PoCでは、何を検証するかを決めておく
PoCを行う場合も、実行計画が必要です。
PoCは、本格導入前に小さく試すための工程です。ただし、何を検証するのかが曖昧なまま始めると、試しただけで終わりやすくなります。
PoC前には、少なくとも次を決めておきます。
- 何を検証するのか
- どの業務で試すのか
- 誰が使うのか
- どの結果なら次へ進むのか
- どの結果なら見直すのか
- 誰が本番導入の判断をするのか
PoCは実行計画の代わりではなく、実行計画の中にある検証工程です。
PoCから本番導入、運用開始までの流れを確認したい場合は、PoCから運用開始までのDX導入フローも参考になります。
先に別整理が必要なケース
次の状態では、実行計画を作る前に、もう少し前提を整理した方がよいです。
- DXの目的が決まっていない
- 改善したい業務が特定できていない
- 現場の業務フローが見えていない
- 経営判断として優先順位が決まっていない
- 関係する部署や担当者が分かっていない
この場合は、いきなり実行計画を作るより、現状業務の棚卸しや目的整理から始めます。
前提整理を飛ばしてしまうと、実行計画の中身がツール名や作業名だけになりやすくなります。実行計画に入る前に、「なぜ変えるのか」「どの業務を変えるのか」「誰が関わるのか」を確認しておくことが大切です。
DX戦略を実行計画に落とすときの注意点
KPIを置けば成功するわけではない
KPIを置くことは大切ですが、KPIだけでDXが進むわけではありません。
KPIが現場行動とつながっていないと、数字を見るだけになります。たとえば、「問い合わせ対応を改善する」というテーマで、売上だけを見ていても、対応漏れや入力漏れ、引き継ぎの問題は見えにくいことがあります。
KPIは、進め方を見直すために置きます。数字がよいか悪いかを見るだけではなく、「なぜそうなっているのか」「次に何を変えるのか」まで確認することが大切です。
また、最初から完璧なKPIを置こうとしすぎないことも大切です。運用してみると、見ていた数字が実態と合わないこともあります。その場合は、指標そのものを見直して構いません。
会議を増やすだけでは進まない
進捗確認のために会議を増やしても、報告だけで終わってしまうと実行計画は進みません。
会議では、次のようなことを確認します。
- 予定していたタスクは進んでいるか
- 止まっている理由は何か
- 担当者だけでは判断できないことはあるか
- KPIや確認指標に変化はあるか
- 次回までに何を変えるか
- 継続するか、見直すか、止めるか
会議は、細かい作業を増やす場ではなく、止まっている理由を見つけ、次の判断を決める場として使います。
会議体は多ければよいわけではありません。現場の負担が増えすぎると、確認のための作業が増えてしまいます。週次、月次、四半期といった区切りは、あくまで例として、自社の負担に合わせて調整します。
実行計画は一度作って終わりにしない
実行計画は、一度作れば終わりではありません。実際に動かすと、想定していなかった課題が出てきます。
担当者の負担が大きすぎる、入力項目が多すぎる、KPIが実態と合わない、会議で確認する内容が多すぎる。こうしたことは、運用してみないと分からない場合があります。
そのため、実行計画には見直しタイミングを入れておきます。月次で小さく修正し、四半期や半期で継続・停止・横展開を判断するようにすると、無理なく進めやすくなります。
実行計画は、固定された計画表ではなく、運用しながら育てるものです。最初の計画が完璧でなくても、見直しの場があれば改善できます。
専任DX部署がない前提でも進められる粒度にする
中小企業では、専任のDX部署がないことも少なくありません。経営者、現場責任者、総務担当、営業担当などが兼任で進めるケースもあります。
その場合、理想的な体制ができるまで待つより、まずは役割と確認方法を分けることが大切です。
たとえば、作業する人、判断する人、相談する人を分けるだけでも、担当者の抱え込みは減らしやすくなります。最初から大きな組織を作らなくても、進める単位を小さくすれば、実行計画は作れます。
大切なのは、専任組織があるかどうかより、関係者が同じ計画を見て、次の判断ができる状態になっているかです。
実行計画づくりに迷ったら、業務整理から始める
まずは業務の流れを見える化する
実行計画づくりに迷ったら、まず業務の流れを見える化します。
確認するのは、ツール名ではありません。どの業務で、どんな手戻り、二重入力、確認漏れ、属人化が起きているかです。
たとえば、問い合わせ対応であれば、次のように見ます。
- 問い合わせはどこから来るか
- 誰が最初に確認するか
- 担当者はどう決まるか
- 対応履歴はどこに残るか
- 未対応はどう確認するか
- 引き継ぎはどこで行うか
- 月次で何を振り返るか
このように業務の流れが見えると、実行計画に入れるタスク、担当、KPIも決めやすくなります。
業務整理は、システムやツールを入れる前の準備でもあります。現場の流れが見えていない状態でツールを選ぶと、あとから運用ルールを合わせる必要が出やすくなります。
戦略を現場で動く表に変える
DX戦略を実行計画に落とす作業は、単なる作業表づくりではありません。
経営側が考える「こう変えたい」という方針を、現場が確認できる表に変える作業です。改善テーマ、タスク、担当、期限、確認指標、見直しタイミングが並ぶことで、関係者が同じ情報を見ながら判断しやすくなります。
DX戦略を現場で動く表に変えることが、実行計画づくりの中心です。
この表は、最初から完璧である必要はありません。動かしながら見直せることの方が重要です。
実務では、計画表そのものよりも、その表を見て会話できる状態が重要です。担当者が迷ったときにどこを見ればよいか。経営側が進捗を確認するときに何を判断すればよいか。そこまで整理できると、戦略は現場で使いやすくなります。
相談前に整理しておくとよいこと
外部に相談する前にも、実行計画の材料を少し整理しておくと話が進めやすくなります。
相談前には、次のような情報をまとめておくとよいです。
- DX戦略やロードマップがあるか
- 改善したい業務は何か
- 現在困っていることは何か
- 関係する部署や担当者は誰か
- いま使っているツールや管理方法は何か
- これから試したいことは何か
- 何を見て効果を判断したいか
- どのタイミングで見直したいか
ここまで整理できていれば、ツール導入やPoCの相談もしやすくなります。逆に、ここが曖昧なまま相談すると、提案内容がツールや機能の話に寄りやすくなります。
DX戦略を現場で動く形にしたい場合は、まず業務整理から始めるのが現実的です。
よくある質問
- DX戦略と実行計画は何が違いますか?
- DX戦略は、何のために業務や仕組みを変えるのかを示す方針です。実行計画は、その戦略を進めるために、誰が、何を、いつまでに、何を見て判断するかまで整理したものです。戦略が方向性だとすれば、実行計画は現場で動くための確認表です。
- DXロードマップがあれば、実行計画は不要ですか?
- DXロードマップだけでは、実行計画として不十分な場合があります。ロードマップは、どの順序で進めるかを整理するものです。ただし、担当者、期限、KPI、会議体まで決まっていないことがあります。ロードマップを現場タスクに分解し、実際に進めるための表にしたものが実行計画です。
- DX実行計画には何を書けばよいですか?
- DX実行計画には、目的、改善テーマ、現場タスク、担当者、責任者、期限、優先順位、KPIや確認指標、進捗確認の場、見直しタイミング、止まったときの相談先を整理します。最初からすべてを細かく作る必要はありませんが、担当・期限・確認指標は最低限決めておくと進めやすくなります。
- KPIは必ず数値で設定する必要がありますか?
- KPIは、必ずしもすべてを数値で設定する必要はありません。件数、時間、入力率のように数値で見られるものは定量指標として使えます。一方で、確認できているか、共有できているか、判断できる状態かといった定性的な確認も必要になる場合があります。大切なのは、次の見直しに使える指標にすることです。
- 小規模な会社でもDX実行計画は必要ですか?
- 小規模な会社でも、DX実行計画を簡単な形で作っておく意味はあります。小規模な会社ほど、担当者が兼任になりやすく、口頭や個人判断で進みやすい面があります。大きな計画ではなく、1つの業務や1つの改善テーマから始める形で、誰が何を進めるのか、どこで確認するのかを見えるようにしておくと進めやすくなります。
- ツール導入前に実行計画を作るべきですか?
- ツール導入前に、最低限の実行計画を整理しておくと進めやすくなります。どの業務を変えるのか、誰が使うのか、何を見て効果を判断するのかが曖昧なままツールを選ぶと、導入後の運用が後付けになりやすいからです。完璧な計画でなくても、対象業務と確認指標は整理しておくとよいです。
- 実行計画づくりを外部に相談してもよいですか?
- 実行計画づくりは、外部に相談しても問題ありません。特に、DX戦略やロードマップはあるものの、現場タスク、担当者、KPI、確認会議まで落とし込めていない場合は、業務整理から相談すると進めやすくなります。外部に相談する前に、改善したい業務、現在困っていること、関係する担当者、使っているツールを整理しておくと、具体的な相談につながりやすくなります。
DX戦略を現場で動く計画に整理しませんか
DX戦略を作ったものの、現場タスクや担当、KPIまで落とし込めていない場合は、業務整理から実行計画づくりまで一緒に整理できます。
LinkTachのDX推進支援では、ツール導入前の業務整理、現場で確認しやすい実行計画づくり、PoCや運用開始前の整理まで、非IT担当者にも分かる形でサポートします。
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