DX組織の構築と推進体制の重要性を解説した画像


DXを進めたいと思っても、「誰を中心に進めればよいのか」「DX担当者を置けばよいのか」「既存部署のまま進められるのか」で迷う企業は少なくありません。

結論から言うと、DX推進体制はDX担当者を1人決めることではなく、経営判断・現場の課題整理・技術面の支援・導入後の運用をつなぐ役割分担を整えることです。

特に中小企業では、最初から専任のDX部門を作るのが難しいこともあります。この記事では、DX推進体制とDX組織の考え方、中小企業でも始めやすい最小体制、役割分担、失敗しやすい進め方、外部支援を使う場合の整理ポイントを解説します。

もくじ

DX推進体制とは、DXを動かすための役割分担のこと

DX推進体制とは、DXを実行するために必要な役割、判断の流れ、責任範囲、社内外の連携を整理したものです。

DX推進体制は、DX担当者を1人決めることではなく、誰が判断し、誰が現場で動き、誰が技術や運用を支えるかを決めることです。

DX組織の作り方も、最初から部署名を決めることではありません。まずは、目的を決める人、現場の課題を整理する人、技術面を確認する人、導入後の運用を見る人を明確にするところから始めます。

たとえば、ツールを導入する場合でも、次のような役割が曖昧だと進みにくくなります。

  • 何を改善したいのかを決める人
  • どの業務から進めるかを判断する人
  • 現場の困りごとを整理する人
  • ツールやシステムの選択肢を確認する人
  • 導入後の使い方や運用ルールを決める人
  • 効果を見直し、改善を続ける人

DX推進体制づくりでは、最初から大きな組織を作る必要はありません。まずは、DXを止めずに進めるための判断と実行の流れを作ることが重要です。

実務では、「DX担当者を決めたのに進まない」という状態が起きることがあります。これは担当者の能力だけの問題ではなく、判断権限、現場との連携、運用後の責任範囲が曖昧なまま進んでいることが原因になる場合があります。

DX推進体制は担当者を置くだけではない

DX担当者を置くこと自体は、悪いことではありません。むしろ、進行役を決めることは大切です。

ただし、担当者を1人決めただけでは、DX推進体制ができたとは言えません。

担当者に判断権限がなければ、現場の意見を集めても次に進めません。現場の協力がなければ、実際の業務に合わない仕組みになりやすくなります。IT担当や外部支援者との連携が弱ければ、技術面の確認や導入後の運用で止まることもあります。

DX推進体制では、「誰が担当するか」だけでなく、「誰が何を決めるか」「誰と連携するか」「導入後に誰が見直すか」まで整理します。

ここを整理しておくと、ツール導入やシステム開発の前に、社内で判断すべきことと外部に相談すべきことを分けやすくなります。

DX推進体制で決めるべき主な項目

DX推進体制を作るときは、いきなりツールやシステムを選ぶのではなく、まず「目的」「役割」「運用」の順で整理すると進めやすくなります。

少なくとも、次の項目は確認しておきたいところです。

  • DXの目的
  • 優先して改善する業務
  • 最終判断者
  • 推進担当
  • 現場窓口
  • IT担当または外部支援者
  • 予算やスケジュール
  • 導入後の運用担当
  • 効果確認と改善の方法

ここが曖昧なまま進めると、ツールを入れたあとに「誰が使うのか」「誰が管理するのか」「改善要望は誰がまとめるのか」が分からなくなります。

DX推進体制は、導入前だけでなく、導入後に使い続けられる状態まで見て整える必要があります。

たとえば、問い合わせ管理を改善する場合でも、システムを入れるだけでは不十分です。問い合わせを誰が確認し、誰が返信し、顧客情報をどこに残し、対応漏れをどう防ぐのかまで整理しておく必要があります。

DX組織とは何か|専任部署だけがDX組織ではない

DX組織と聞くと、DX部門やデジタル推進室のような専任部署を想像するかもしれません。

しかし、DX組織は必ずしも専任部署だけを指すものではありません。DXを進めるために、経営層、推進担当、現場担当、IT担当、外部支援者が連携できる状態も、広い意味ではDX組織の一つです。

中小企業では、最初からDX専任部署を作るより、既存部署や兼任担当を中心に、小さく始める方が現実的な場合もあります。

DX組織は全社をつなぐ機能として考える

DXは、IT担当だけで完結するものではありません。業務の流れ、顧客対応、社内共有、データ管理、運用ルールなどに関わります。

そのため、DX組織は「システムを導入する部署」ではなく、社内の関係者をつなぐ機能として考えると分かりやすくなります。

たとえば、問い合わせ対応を改善する場合でも、営業担当、事務担当、管理者、Web担当、システム担当が関わることがあります。誰か1人だけで決めるのではなく、現場の使いやすさと経営上の目的をつなぐ役割が必要です。

DX組織づくりでは、部署名よりも、連携の仕組みを整えることが先です。

また、DX組織は一度作れば終わりではありません。導入した仕組みが現場で使われているか、業務の負担が増えていないか、改善すべき点が残っていないかを見直す流れも含めて考える必要があります。

DX推進体制、DX組織、DX人材、DX戦略の関係

DXに関連する言葉には、DX推進体制、DX組織、DX人材、DX戦略、DXロードマップなどがあります。似た言葉が多いため、関係を整理しておきます。

用語役割
DX戦略何のためにDXを進めるのかを決める
DXロードマップどの順番で進めるのかを整理する
DX推進体制誰が判断し、誰が動かすのかを決める
DX組織DXを進めるためのチームや連携機能
DX人材DXに必要な役割を担う人

DX人材を採用すれば、すべてが解決するわけではありません。経営判断、現場理解、技術支援、運用改善がつながって初めて、DXは動きやすくなります。

DX組織を考えるうえでは、どのような役割を担う人材が必要かも整理しておくと分かりやすくなります。DX人材の考え方を確認する

ここで大切なのは、DX人材を「特別な専門家」だけに限定しないことです。現場を理解する人、業務を整理する人、技術面を確認する人、経営判断を支える人など、複数の役割が組み合わさって体制になります。

中小企業のDX推進体制は最小限の役割から始められる

中小企業では、最初から大きなDX部門を作るのは難しいことがあります。

その場合でも、DX推進体制を作れないわけではありません。大切なのは、人数を増やすことではなく、必要な役割を分けて考えることです。

専任部署がなくても、責任者・推進担当・現場窓口・ITまたは外部支援との連携を決めれば、小さく始めるDXは進めやすくなります。

最初に決めたい4つの役割

中小企業でDX推進体制を作る場合、まずは次の4つの役割を整理します。

役割主な担当者例担うこと
経営判断をする人経営者、役員、事業責任者目的、優先順位、予算を判断する
推進を管理する人管理者、DX担当者、プロジェクト担当進行管理、関係者調整、課題整理を行う
現場の課題を伝える人現場責任者、実務担当者業務の流れ、困りごと、使いやすさを伝える
ITまたは外部支援とつなぐ人IT担当、Web担当、外部支援会社との窓口技術面、ツール選定、実装、運用をつなぐ

この4つは、必ず4人で分ける必要はありません。小規模事業者では、経営者が判断者と推進担当を兼ねることもあります。

重要なのは、役割そのものを曖昧にしないことです。

役割が曖昧なままだと、現場から改善案が出ても判断できなかったり、ツールを導入しても運用担当が決まっていなかったりします。小さなDXほど、関係者が少ない分、役割の曖昧さがそのまま停滞につながりやすくなります。

1人が兼任しても、役割は分けて考える

小さな会社では、1人が複数の役割を持つことはよくあります。

たとえば、管理者が推進担当と現場窓口を兼ねることもあります。経営者が最終判断をしながら、外部支援会社との窓口になることもあります。

それでも、次の点は分けて考える必要があります。

  • 最終判断は誰がするのか
  • 現場の困りごとは誰が集めるのか
  • ツールやシステムの候補は誰が確認するのか
  • 導入後の運用ルールは誰が決めるのか
  • 改善要望は誰がまとめるのか

役割を分けて考えておくと、兼任でも動きやすくなります。逆に、役割が曖昧なままだと、通常業務に埋もれて進まなくなります。

兼任体制では、「時間が空いたら進める」ではなく、いつ、誰が、どこまで確認するのかを決めておくことも大切です。DXは通常業務の合間に進めることが多いため、優先順位を決めておかないと後回しになりやすくなります。

小さく始めるDXでも体制づくりが必要な理由

「小さく始めるなら、体制づくりまでは必要ないのでは」と感じるかもしれません。

しかし、たとえばExcel管理をクラウド化するだけでも、誰が入力し、誰が確認し、誰がルールを直すのかを決めておかないと、運用が定着しにくくなります。

問い合わせ管理、顧客情報管理、見積・請求業務、日報管理なども同じです。小さな改善でも、使う人、判断する人、改善する人が必要です。

最小限の体制を決めたら、次は目的整理から運用定着までの流れを考える必要があります。DX導入ステップを確認する

小さく始めるDXでは、最初の一歩を小さくすることと、体制を曖昧にすることを混同しないようにします。対象業務は小さくても、誰が判断し、誰が使い、誰が見直すかは決めておく必要があります。

DX組織の構築と推進体制の重要性を解説した画像

DX推進体制で必要な役割分担

DX推進体制では、経営層、推進担当、現場担当、IT担当、外部支援者の役割を整理します。

それぞれが何を担うのかが曖昧だと、DXは止まりやすくなります。逆に、役割が整理されていると、ツール選定やシステム導入の前に、何を改善すべきかを考えやすくなります。

DX推進体制で重要なのは、経営・現場・技術を分けて考えることではなく、それぞれをつなぐ流れを作ることです。

役割担うこと曖昧にすると起きる問題
経営層目的、優先順位、予算、最終判断現場任せになり、投資判断や部門調整が止まる
推進担当進行管理、課題整理、関係者調整誰が進めるのか分からず、通常業務に埋もれる
現場担当業務課題、運用実態、使いやすさの確認実務に合わない仕組みになり、使われなくなる
IT担当技術確認、既存システム、セキュリティ、運用技術的な制約や運用負担を見落とす
外部支援者要件整理、設計、実装、運用支援社内の目的が曖昧だと、提案や実装がずれる

経営層は目的と優先順位を決める

経営層の役割は、DXの目的と優先順位を決めることです。

DXは、現場の便利さだけでなく、経営課題とつながっている必要があります。たとえば、問い合わせ対応を早くしたい、見積作成の手戻りを減らしたい、顧客情報を共有しやすくしたいなど、何を改善するのかを決める必要があります。

経営層が関わらないまま進めると、現場の改善活動として始まっても、予算や人員の判断ができず止まることがあります。

DX推進体制は、経営判断や重点領域と切り離せません。どの業務から優先して変えるのかを考えるには、DX戦略の立て方を確認することも役立ちます。

経営層が目的を示すことで、現場やIT担当は「何のために変えるのか」を理解しやすくなります。逆に、目的が曖昧なままだと、現場は新しい作業が増えたように感じやすく、IT担当もどの要件を優先すべきか判断しにくくなります。

推進担当は関係者をつなぎ、進行を管理する

推進担当は、DXの実行を進める中心役です。

ただし、すべてを自分で決めたり、実装したりする人ではありません。経営層、現場、IT担当、外部支援者をつなぎ、必要な情報を整理して進行する役割です。

推進担当が担うことは、主に次のようなものです。

  • 現場の課題を整理する
  • 経営層に判断材料を共有する
  • IT担当や外部支援者とやり取りする
  • スケジュールを管理する
  • 導入後の運用ルールづくりを進める
  • 改善要望を整理する

現場の困りごとをそのままツール選定に進めるのではなく、業務の流れと判断のポイントに分けて整理すると、必要な仕組みが見えやすくなります。

推進担当には、専門的なIT知識だけでなく、社内の言葉を整理する力も求められます。現場の「使いにくい」「手間が多い」という声を、業務フローや要件として整理することで、技術担当や外部支援者も具体的に検討しやすくなります。

現場担当は業務課題と運用実態を伝える

現場担当は、実際の業務で何が起きているのかを伝える役割です。

DXは、現場の流れに合っていなければ定着しません。管理者やIT担当がよいと思った仕組みでも、現場で使いにくければ、結局使われなくなることがあります。

現場担当には、次のような役割があります。

  • 現在の業務フローを説明する
  • 二重入力や手戻りを洗い出す
  • 紙やExcelで管理している情報を整理する
  • 導入後の使いやすさを確認する
  • 現場メンバーへの説明や定着を助ける

DX推進体制では、現場の声を集めるだけでなく、それを改善方針や要件に変換することが重要です。

たとえば、「入力が面倒」という声だけでは、何を変えるべきか分かりにくい場合があります。どの画面で、どの項目を、どのタイミングで入力しているのかまで確認すると、二重入力の削減や入力ルールの見直しにつながります。

IT担当や外部支援者は技術面を支える

IT担当や外部支援者は、技術面や実装面を支える役割です。

たとえば、既存システムとの連携、セキュリティ、アカウント管理、ツール選定、システム開発、運用保守などを確認します。

ただし、DXをIT担当だけに任せるのは危険です。IT担当は技術面を支えられますが、経営課題や現場の運用まですべて判断する立場ではないことが多いからです。

役割分担を決めたあとは、誰が、いつ、何を進めるのかを実行計画に落とす必要があります。DX推進ロードマップの作り方を確認する

技術面の検討では、「できるかどうか」だけでなく、「現場が使い続けられるか」「運用負担が増えすぎないか」も確認します。高機能なツールでも、現場の流れに合わなければ定着しにくいためです。

専任DX組織を作る場合と兼任体制で進める場合の違い

DX推進体制を考えるとき、専任DX組織を作るべきか、既存部署や兼任担当で進めるべきか迷うことがあります。

結論としては、どちらが正解というより、自社の規模、目的、予算、人員、改善したい業務の範囲によって判断します。

体制向いているケースメリット注意点
専任DX組織複数部署にまたがるDX、中長期の戦略、システム刷新推進責任が明確になりやすい現場から離れると実務に合わない施策になりやすい
兼任体制小さく始めたい、一部業務から改善したい、人員に余裕がない現場に近いところから始めやすい通常業務に埋もれやすく、判断が遅れやすい
外部支援併用社内にIT人材や設計経験が不足している不足する知識や実装力を補える社内側の目的や判断者が曖昧だと丸投げになりやすい

専任DX組織が向いているケース

専任DX組織が向いているのは、複数部署にまたがる取り組みや、中長期のDX戦略を進める場合です。

たとえば、全社の基幹システムを見直す、顧客情報を全社で統合する、複数拠点の業務を標準化する、といった場合は、専任組織がある方が進めやすくなります。

ただし、専任組織を作れば必ずうまくいくわけではありません。専任組織が現場から離れると、実務に合わない施策になる可能性があります。

専任組織を作る場合でも、現場との対話は欠かせません。

また、専任組織がある場合でも、現場部門やIT担当との関係が弱ければ、企画だけが先行してしまうことがあります。専任組織は、現場を動かすための上位部署ではなく、社内の関係者をつなぐ役割として設計することが大切です。

既存部署や兼任担当で始めるケース

中小企業では、既存部署や兼任担当で始める方が現実的な場合も多いです。

たとえば、問い合わせ対応を整理する、請求業務を効率化する、日報をデジタル化するなど、一部業務から始める場合は、現場に近い担当者を中心に進める方が動きやすいことがあります。

ただし、兼任担当に任せきりにすると、通常業務に埋もれてしまいます。経営層が優先順位を示し、必要な判断を行うことが大切です。

兼任体制では、担当者の頑張りに依存しすぎないことも重要です。会議の頻度、判断のタイミング、相談先、外部支援の使い方を決めておくと、属人的になりにくくなります。

どちらの場合も現場との連携は欠かせない

専任DX組織でも、兼任体制でも、現場との連携がなければDXは進みにくくなります。

DXは、会議室だけで決めた計画では動きません。実際に業務を行う人が、どこで困っているのか、どの作業に時間がかかっているのか、どのルールなら続けられるのかを確認する必要があります。

体制の形よりも、現場とつながる仕組みがあるかどうかが重要です。

現場との連携を保つには、導入前だけでなく、導入後の確認も必要です。使いにくい点や改善要望を集める流れがあると、DXが一度きりの導入で終わりにくくなります。

DX推進体制づくりで失敗しやすい進め方

DX推進体制を作るときは、よくある失敗パターンを知っておくと、事前に対策しやすくなります。

DXが進まない原因は、ツールや人材だけではありません。目的、判断者、現場窓口、運用担当が曖昧なことも大きな原因になります。

ツール先行で進めてしまう

よくあるのが、課題を整理する前にツールを導入してしまうケースです。

たとえば、顧客管理システムやチャットツール、AIツールなどを先に入れても、何を改善したいのか、誰が使うのか、運用ルールをどうするのかが決まっていなければ定着しにくくなります。

ツールを選ぶ前に、次の点を確認します。

  • 何の業務を改善したいのか
  • 誰が使うのか
  • 現在の業務フローはどうなっているのか
  • 導入後のルールは誰が決めるのか
  • 改善要望は誰がまとめるのか

ツールは、業務課題を解決するための手段です。先に手段を決めると、あとから業務をツールに合わせる形になり、現場の負担が増えることがあります。

IT担当任せになってしまう

DXをIT担当だけに任せると、システム導入の話に偏りやすくなります。

IT担当は技術面では重要ですが、経営判断や現場業務のすべてを把握しているとは限りません。業務部門や現場担当が関わらないと、実際の使い方に合わない仕組みになる可能性があります。

IT担当は、経営層や現場担当と連携しながら、技術面を支える役割として位置付けるのが自然です。

IT担当にすべてを任せるのではなく、経営層が目的を決め、現場が業務課題を伝え、IT担当が技術面を確認する流れを作ると、判断が偏りにくくなります。

現場任せで止まってしまう

現場から始まる改善は大切です。

ただし、現場任せにしてしまうと、予算や部門間調整が必要になったタイミングで止まることがあります。現場担当には実務の知識がありますが、最終判断や投資判断まで任せるのは難しい場合があります。

現場の声を活かすには、経営層や推進担当が受け止め、必要な判断につなげる流れが必要です。

現場任せのままだと、改善案が出ても「誰に相談すればよいか分からない」「予算が取れない」「他部署との調整が進まない」といった状態になりやすくなります。

外部支援会社に丸投げしてしまう

外部支援会社を使うこと自体は有効です。

ただし、社内側の目的や判断者が曖昧なまま依頼すると、提案や実装が現場に合わないことがあります。

外部支援を使う前に、少なくとも次の点は整理しておきたいところです。

  • 何を改善したいのか
  • 誰が判断するのか
  • 誰が現場の状況を説明するのか
  • 誰が使うのか
  • 導入後に誰が運用するのか

ツール先行、IT担当任せ、現場任せ、外部丸投げは、DXが止まりやすい代表的なパターンです。より具体的な注意点は、DXが失敗する原因を確認すると整理しやすくなります。

外部支援を使う場合でも、社内側に判断軸があるほど、支援会社は提案しやすくなります。逆に、目的や現場状況が曖昧なままだと、提案内容が一般論に寄りやすくなります。

外部支援を使う場合も社内の役割整理が必要

DX推進体制を社内だけで整えるのが難しい場合、外部支援会社を活用するのも一つの方法です。

ただし、外部支援は丸投げ先ではありません。社内に足りない知識や実装力を補い、目的整理や要件整理を進めやすくする存在として考えるのが自然です。

外部支援を活用する場合でも、社内側の目的、判断者、現場窓口、運用担当が決まっているほど、支援内容は具体化しやすくなります。

外部支援会社に相談する前に整理すること

外部支援会社に相談する前に、次の点を整理しておくと話が進めやすくなります。

  • 何に困っているのか
  • どの業務を改善したいのか
  • 誰が最終判断をするのか
  • 誰が現場の業務を説明するのか
  • 既存のツールやシステムは何か
  • 導入後に誰が使うのか
  • 運用ルールは誰が決めるのか
  • 外部に任せたい範囲はどこか
  • 社内で判断したい範囲はどこか

この整理ができていると、外部支援会社も提案しやすくなります。逆に、目的や判断者が曖昧なままだと、見積や提案は出ても、実際の運用につながりにくくなります。

相談前の整理は、完璧でなくても問題ありません。「何が分からないのか」「どこで止まっているのか」を言語化するだけでも、次の打ち手を考えやすくなります。

外部支援は社内体制を補うものとして考える

外部支援会社は、社内の判断を代わりにする存在ではありません。

業務整理、要件定義、ツール選定、システム設計、実装、運用改善などを支援することはできますが、「何を変えたいのか」「どこまで社内で判断するのか」は、自社側でも持っておく必要があります。

外部支援を使う場合は、次のように役割を分けると考えやすくなります。

項目社内で整理すること外部支援に相談しやすいこと
目的何を改善したいか改善方法の整理
業務現在の流れ、困りごと業務整理、要件化
技術既存ツール、制約ツール選定、設計、実装
運用誰が使うか、誰が管理するか運用設計、改善提案

外部支援をうまく使うには、「社内で決めること」と「外部に相談すること」を分けることが大切です。すべてを社内で抱え込む必要はありませんが、すべてを外部に任せると、導入後に自社で運用しにくくなる場合があります。

ツール選定前に業務と役割を整理する

外部支援に相談する場合でも、最初からツール名を決める必要はありません。

むしろ、最初に整理したいのは、業務の流れと役割です。

たとえば、問い合わせ対応を改善したい場合は、どこから問い合わせが来るのか、誰が確認するのか、誰が返信するのか、顧客情報をどこに残すのか、対応漏れをどう防ぐのかを整理します。

このように業務を分解すると、システム化すべき部分と、人が判断した方がよい部分が見えやすくなります。

技術導入は、業務の整理があってこそ効果を発揮しやすくなります。先に業務と役割を整理しておくことで、ツール選定やシステム設計の判断もしやすくなります。

まずは自社のDX推進体制を見直すところから始める

DX推進体制づくりは、最初から大きな組織を作ることではありません。

まずは、自社の中で誰が判断し、誰が現場で動き、誰が技術や運用を支えるのかを確認することから始められます。

相談前に確認したいチェックポイント

自社のDX推進体制を見直すときは、次の点を確認してみてください。

  • DXで改善したい業務は決まっているか
  • 最終判断者は決まっているか
  • 推進担当は決まっているか
  • 現場の課題を説明できる人はいるか
  • IT担当または外部支援者との窓口は決まっているか
  • 予算やスケジュールの目安はあるか
  • 導入後に誰が運用するか決まっているか
  • 改善要望を誰がまとめるか決まっているか
  • 最初に小さく試す業務は決まっているか

すべてを完璧に決める必要はありません。最初は、分かっていることと分からないことを分けるだけでも十分です。

たとえば、「問い合わせ対応が遅れていることは分かっているが、どのツールを使うべきか分からない」という状態でも、相談の入口としては十分です。業務の流れを整理することで、必要な体制や支援範囲が見えやすくなります。

大きな組織づくりより、改善を止めない流れを作る

DX推進体制は、立派な組織図を作ることが目的ではありません。

大切なのは、改善を止めない流れを作ることです。

DX推進体制づくりは、大きな部署を作ることではなく、目的・判断者・現場窓口・運用担当を整理し、改善を続けられる状態を作ることです。

専任DX組織がなくても、最小限の役割分担から始めることはできます。ツール選定の前に、まずは自社の業務と役割を見直してみると、次に何をすべきかが見えやすくなります。

社内だけで整理しきれない場合は、外部支援を使うのも一つの方法です。その場合も、丸投げではなく、自社の目的や現場の状況を共有しながら進めることが大切です。

よくある質問

DX推進体制とは何ですか?
DX推進体制とは、DXを実行するために、誰が判断し、誰が現場で動き、誰が技術や運用を支えるかを整理した仕組みです。DX担当者を置くだけではなく、経営層、推進担当、現場担当、IT担当、外部支援者の役割分担まで考える必要があります。
DX組織は専任部署がないと作れませんか?
専任部署がなくても、DX組織づくりは始められます。中小企業では、既存部署や兼任担当を中心に、責任者、推進担当、現場窓口、ITまたは外部支援との連携を決める形が現実的な場合もあります。
中小企業では誰がDX推進を担当すべきですか?
企業規模や目的によって異なりますが、経営判断をする人、推進を管理する人、現場の課題を伝える人、ITまたは外部支援とつなぐ人の役割を整理することが大切です。1人が複数の役割を兼ねても構いませんが、役割自体を曖昧にしないことが重要です。
DX担当者を置いても進まないのはなぜですか?
DX担当者に判断権限がなかったり、現場の協力が得られなかったり、IT担当や外部支援者との連携が弱かったりすると、担当者を置いても進みにくくなります。担当者だけでなく、経営層、現場、技術支援、運用担当を含めた体制づくりが必要です。
外部支援会社に相談する前に何を整理すべきですか?
何を改善したいのか、誰が判断するのか、誰が現場の状況を説明するのか、誰が導入後に運用するのかを整理しておくと相談しやすくなります。外部支援は丸投げ先ではなく、社内に足りない整理・設計・実装の力を補うものとして考えると進めやすくなります。

DX推進体制づくりを、役割分担から整理しませんか

DX推進体制は、最初から大きな部署を作ることではありません。まずは、自社の業務課題に対して、誰が判断し、誰が現場で動き、誰が運用を見ていくのかを整理することから始められます。

DX推進体制づくりや業務整理、ツール選定前の要件整理でお悩みなら、LinkTachが自社に合った進め方を一緒に整理します。

お問い合わせはこちら
※専任DX組織がない場合でも、最小限の役割分担から相談できます。